東京高等裁判所 平成7年(ネ)3344号 判決 1999年3月18日
控訴人
株式会社光栄
右代表者代表取締役
襟川陽一
右訴訟代理人弁護士
森本紘章
松田政行
早稲田祐美子
齋藤浩貴
谷田哲哉
右訴訟復代理人弁護士
山崎卓也
被控訴人
株式会社技術評論社
右代表者代表取締役
片岡巌
右訴訟代理人弁護士
志村新
椙山敬士
錦徹
藤田康幸
主文
本件控訴を棄却する。
控訴人の当審における新請求を棄却する。
当審の訴訟費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
一 控訴人の申立て
控訴人は、原判決の取消しの判決とともに、次のとおりの判決(2、3は当審における新請求)及び仮執行宣言を求めた。
1 被控訴人は、別紙物件目録記載の記憶媒体を製造頒布してはならない。
2 被控訴人は控訴人に対し、一九二二万四〇〇〇円及びこれに対する平成八年七月一七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
3 被控訴人は控訴人に対し、一〇〇万円及びこれに対する平成一〇年四月二三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 被控訴人の答弁
被控訴人は、控訴棄却の判決とともに、控訴人の当審における新請求に対して次のとおりの判決を求めた。
1 控訴人の当審新請求に関する訴えを却下する。
2 (予備的に)控訴人の当審新請求を棄却する。
三 控訴人主張の請求原因
1 控訴人は、「三國志Ⅲ」と題するパーソナルコンピューター用シミュレーションゲームプログラム(本件著作物)に関する著作者人格権及び著作財産権を有する。
2 被控訴人は、商品名「三國志Ⅲ非公式ガイドブック」と題する書籍(被控訴人書籍)を発売しているが、この書籍中のフロッピーディスクに含まれる別紙物件目録記載のプログラム(被控訴人プログラム)は、控訴人の著作者人格権(同一性保持権)及び著作財産権(翻案権)を侵害する。
3 よって、控訴人は被控訴人に対し、著作者人格権に基づき、別紙物件目録記載の記憶媒体の製造頒布の差止め(原審からの請求)及び慰謝料の支払(前記一の3)を求め、著作財産権に基づき、損害賠償(前記一の2)を求める。
四 前提事実(原判決摘示の争いのない事実中、当審においても争いのない事実)
(なお、控訴人は、原判決が争いのない事実として示した「被控訴人プログラムを使用して、ユーザーが新武将等を登録し一〇〇を超える能力値を設定しても、本件著作物のメインプログラム、データ登録用プログラム、チェックルーティンプログラムが改変されるものではない。」との事実につき、当審でこれを争うと主張したのに対し、被控訴人は自白の撤回に当たると主張する。しかしながら、控訴人のこの主張は、後記争点1における控訴人の主張と関連するものであり、事実関係の主張というよりはプログラムの著作権の改変に関する法的主張を述べるものであるから、自白の撤回には当たらないというべきである。)
(一) 控訴人は、平成四年二月四日本件著作物を創作し、本件著作物に関する著作者人格権を有する。
(二) 被控訴人は、平成五年二月二五日以降被控訴人書籍を発売しているが、右書籍には、被控訴人プログラムが入ったフロッピーディスクが添付されている。
(三)(1) 本件著作物は、出荷時において、登場人物として約五〇〇名の既成君主、既成武将を設定しているが、これらについては、中国の古書「三國志演義」から得た思想、感情を基に登場人物像を分析し、その能力を六つの要素に分け、一から一〇〇までの範囲で、登場人物ごとにその能力を、能力値として数値で表現し設定している。また、本件著作物は、既成君主、既成武将のほかに、ユーザーが、データ登録用プログラムを用いて六八名の登場人物(新君主八名、新武将六〇名)を作り出し、その能力値を新たに設定することができるようになっているが、ユーザーは、新君主、新武将を作り出さないで、既成君主、既成武将のみでも本件著作物のゲームを展開して楽しむことができる。
(2) 本件著作物中には、ユーザーによる新君主、新武将の登録用ファイルとして「NBDATA」という名称のファイルが含まれ、また「NBDATA」中に能力値を書き込むためのデータ登録用プログラム(控訴人登録プログラム)が含まれるが、控訴人登録プログラムには、次の①ないし④のプログラムが含まれている。
① キーボードからの情報を読み取るプログラム
② キーボードから読み取った情報を、能力値としてメモリー上に書き込むプログラム
③ メモリー上に書き込まれた能力値を、フロッピーディスク上の「NBDATA」に能力値として書き込むプログラム
④ ユーザーがメモリー上に書き込める能力値を、一から一〇〇までとするチェックルーティンプログラム
(四)(1) 被控訴人プログラムは、本件著作物に含まれる控訴人登録プログラムに代わる別個のプログラムで、控訴人登録プログラムに含まれるようなチェックルーティンプログラムを含まないデータ登録用プログラムであり、新君主、新武将につきユーザーが一〇〇を超える能力値を設定することができるものである。
(2) 被控訴人プログラムは、ユーザーがこれを用いることにより、ユーザー自身において当該データがどのフロッピーディスクのいかなるファイルに記憶されているかを捜す必要がなく、また作業及びデータの構造を解析する必要もなくして、フロッピーディスク上の「NBDATA」に能力値を書き込むことを可能にしたプログラムである。
五 争点
(控訴人が平成一〇年四月二三日付け準備書面で主張したところを踏まえて、本件の争点を、次のとおり整理する。なお、1及び2の争点に関する当事者双方の主張は、当該争点に対する当裁判所の判断の直前に記載のとおりである(後記六、七)。)
1 被控訴人プログラムは、本件著作物におけるプログラムを改変するものか。
2 本件著作物におけるゲーム(本件ゲーム)は、映画の著作物(著作権法一〇条一項七号)又はゲームの著作物(著作権法二条一項一号)といえるか。
3 控訴人は、映画の著作物、ゲームの著作物の著作者、著作権者といえるか。
(一) 控訴人の主張
本件のようなビデオゲームでは、ユーザーのプレイによってゲームの画面展開は幾通りにも変化し得るが、その展開はすべて控訴人がメインプログラムやCGデータによって用意したものである。本件ゲームには乱数が用いられているが、これもすべて控訴人のプログラムによって設定されている。したがって、本件ゲーム展開の著作者、著作権者は控訴人である。
(二) 被控訴人の主張
控訴人登録プログラムを用いて入力した場合のゲーム展開は、ユーザーのプレイによって生じるものであるから、ユーザーがその著作者、著作権者であって、控訴人がその著作者、著作権者ではない。
4 被控訴人プログラムにより、映画の著作物、ゲームの著作物の改変があったといえるか。
(一) 控訴人の主張
被控訴人プログラムにより能力値が入力された新君主、新武将を登場させて本件ゲームをプレイする場合に、控訴人登録プログラムを用いて入力した場合のゲーム展開にはあり得ない展開を生じさせるということは、控訴人登録プログラムを用いて入力した場合のゲーム展開にあり得ない展開を付け加える改変行為である。
(二) 被控訴人の主張
(1) 被控訴人プログラムの使用によっても、武将の顔などの映像的特質が何ら変化を受けない以上、改変はない。
(2) 能力値の限定はルールにすぎず、ゲームのルールに著作物性がない以上、本件著作物の改変はない。
(3) 幅広い展開が予定されているゲームでは、そこに表現されている思想、感情は著作者人格権との結び付きも弱い。
(4) 本件ゲームは融通無碍で、作品としての統一性、完結性もない以上、著作者人格権による保護に値しない。
(5) 被控訴人プログラムは、比較的短期間で飽きる本件ゲームにバリエーションを加えるものであり、ユーザーにも高く評価されている以上、その製造頒布をもって著作者人格権侵害行為とするべきではない。
(6) 本件ゲームの一連の影像の展開は何ら特定されておらず、またそれがいかに改変されているかも特定されていない。
(7) 控訴人の主張は、ゲームソフトの消費者たるユーザーは、家庭内であっても著作者たる控訴人の指定したルールに厳格に従わねばならないとするもので、バランスを欠く。
(8) 改変があったとしても、それが公にされない限り、著作者人格権の侵害があったと解すべきではない。
5 被控訴人プログラムにより、右映画の著作物、ゲームの著作物の翻案があったといえるか。
(一) 控訴人の主張
被控訴人プログラムによって一〇〇を超え二五五までの能力値を有する登場人物を出現させると、登場人物の能力値を一から一〇〇までに限定した本件著作物のストーリーとは異なるゲーム展開となり、また、控訴人登録プログラムを用いて入力した場合のゲーム展開にはあり得ない展開を含むものとなる。したがって、被控訴人プログラムによって、新君主、新武将に一〇〇を超えた能力値を入力したゲームの影像及び展開は、本件著作物を原著作物とした二次的著作物である。
被控訴人プログラムは、登場人物が一〇〇を超えた能力値を有するものであって、一〇〇以内に限定した本件著作物を変形、翻案して本件著作物の二次的著作物を作成するものであり、本件著作物の翻案権を侵害する。
(二) 被控訴人の主張
(1) 被控訴人プログラムを用いて能力値を入力してプレイした場合のゲーム展開は、一切物に固定されておらず、したがって、映画の二次的著作物は存在しない。
(2) 二次的著作物というためには、それ自身で存在し固定され、原作品とは別に譲渡可能であることが必要であるが、本件ではこの要件が満たされていない。
(3) 控訴人の主張は、控訴人登録プログラムを用いて入力した場合のゲーム展開が有限であることを前提とするが、この前提は具体性を欠く。
(4) ゲームソフトは経済財としての性格が強いところ、被控訴人プログラムの販売は本件ゲームの市場拡大につながるので、翻案権侵害とすべきでない。
6 控訴人の損害額はいくらか。
(一) 控訴人の主張
被控訴人書籍の税抜き価格は二一三六円であり、その発行部数は三万部を下らず、定価の三〇パーセントの利益率又は同率の複製、頒布の使用料率から得られる一九二二万四〇〇〇円が、著作財産権侵害の損害額である。
また、著作者人格権侵害の慰謝料額としては、一〇〇万円が相当である。
(二) 被控訴人の主張
争う。
7 被控訴人は、以上すべての著作権侵害の主体といえるか。
(一) 控訴人の主張
被控訴人プログラムを使用するに際し、ユーザーは、被控訴人作成のマニュアル及び画面上の操作方法に関する指示、説明に従って、一〇〇を超える能力値を入力し、コンピューターの実行キーを押すなどの作業をするだけである。これ以外の作業はすべて被控訴人プログラムが行って、「NBDATA」に一〇〇を超える能力値を書き込むのであるから、侵害行為の主体は被控訴人である。この結果、被控訴人プログラムの販売行為によって本件著作物におけるプログラムが変更されるから、右販売行為はユーザーの行為とは全く別の違法行為である。
被控訴人書籍では、被控訴入プログラムの使用方法として一〇〇を超えた能力値の入力を大きな特徴として説明している。さらに、その帯の広告によって、一〇〇を超えた能力値の入力を積極的に勧め、本件著作物の同一性保持権の侵害あるいは翻案権の侵害を積極的に誘引している。これらの侵害を誘引させた結果の経済的利益は、被控訴人に帰属している。
これらのことからすると、被控訴人プログラムをユーザーに対して販売する行為は、被控訴人の管理下において、ユーザーに対し被控訴人プログラムを使用させたものと評価することができる。
(二) 被控訴人の主張
仮に、被控訴人プログラムをコンピューター上で実行することが本件著作物の改変に当たるものとしても、その主体はユーザーであって、被控訴人ではない
8 被控訴人の行為は、著作権法二〇条二項三号等に該当するか。
(一) 被控訴人の主張
被控訴人プログラムは、本件著作物の控訴人登録プログラムの欠点を補い、より効果的に利用できるようにするために必要な便宜をユーザーに提供するもので、著作権法二〇条二項三号、四号により、また同法四七条の二の趣旨からしても、同一性保持権の侵害とはいえない。
(二) 控訴人の主張
便宜の提供と著作権法二〇条二項三号にいう効果的利用とは全く別の概念である。そもそも被控訴人の主張する欠点ないし不便は、ゲーム性に由来し、コンピューター利用上の欠点ないし不便に当たらない。
9 被控訴人の行為は、著作権法四七条の二第一項に該当するか。
(一) 被控訴人の主張
プログラムの複製物の所有者は、著作権法四七条の二によって、自用のための翻案が認められており、そのように、プログラムそれ自体の翻案ですら適法とされている以上、プログラム自体に手を加えない被控訴人プログラムを用いたプレイも適法である。
(二) 控訴人の主張
著作権法四七条の二によって認められる翻案は、コンピューターにおいて利用するために必要と認められる限度にとどまり、自用のための恣意的な翻案まで認めたものではない。
六 争点1についての主張及びこれに対する当裁判所の判断
1 被控訴人プログラムは本件著作物を改変するものか否かに関する争点1につき、当事者双方は、次のとおり主張した。
(一) 控訴人の主張
(1) 本件著作物においてユーザーが書き込む「NBDATA」中の能力値は、すべて一から一〇〇までに限られ、それ以外の能力値が書き込まれた「NBDATA」をもって本件著作物の中に含めて理解することはできない。なお、アイテムと称する道具等を保有することにより見かけ上の能力値が一〇〇を超える場合もあるが、登場人物の六つの能力それ自体について一〇〇を超える能力値を持つ者はいない。
これに対し、ユーザーが被控訴人プログラムを使用して「NBDATA」に一〇〇を超える能力値を与えて本件ゲームをプレイするときには、控訴人の予定した範囲外の展開になる。データ入力範囲の一定の制限は、著作者のゲーム展開における思想、感情を創作的に表現するために必須のものであるところ、データの入力範囲の制限を超えて、圧倒的な強さを持つ能力を有し、敵に対し最終的なダメージを与える数値のデータ入力を可能にさせるプログラムを作成し、これをデータ入力に使用させることは、著作者の思想、感情の表現を侵害する行為であって、同一性保持権を侵害する改変行為である。
被控訴人書籍の帯には、「知力……武力200! オマエはバケモノか!」と記されており、同書籍の被控訴人プログラムが説明されている第五章のタイトルは「バケモノを作る」となっている。これは、控訴人登録プログラムを用いて入力した場合のゲーム展開にあり得ない展開を付け加える改変行為を表明する宣伝文句である。
そして、被控訴人プログラムにより、次のような出力画面の変更が生じ、あり得ない展開が生じることが確認されている。
① 陸上指揮能力又は水上指揮能力に二二八以上の数値を入れてゲームを始め、徴兵、再編成コマンド等で残り兵士数を増減させる場合に、ゲームが先に進まなくなることがある。
② 武将の知力に一六一以上の数値を入力すると、「落とし穴」の計略による兵士の被害が本来は知力の数値に反比例する結果になるべきなのに、常に九九という一定の数値になってしまう。
③ 陸上指揮能力又は水上指揮能力に二二八以上の数値を入力した場合に、事実上兵士の数を無制限に増やせる。
④ 陸上指揮能力又は水上指揮能力に二二八以上の数値を入力した場合に、画面が動かなくなることがある。
(2) 原判決は、本件著作物を実行してプレイした結果展開されるストーリーは、プログラムの著作物ということはできず、「NBDATA」もデータであってプログラムの著作物ではない旨判示したが、これに対する控訴人の主張を敷衍すると、以下のとおりである。
(ア) プログラムの著作物は、狭義のプログラムのみから成り立っている必要はない。本件著作物は、コンピューターの特性を生かすためにデータ部分(「NBDATA」)を狭義のプログラム部分と区別して構成しているが、コンピューターはプログラムだけで動作するものではなく、データを伴って初めてプログラムが意味を持つから、原判決のように、データ部分はプログラムの著作物でないとするのは誤りである。
(イ) 本件著作物は、登場人物の能力値を一〇〇を超えては入力できないよう、チェックルーティンプログラムを内蔵し、これにより能力値設定範囲を限定し、能力値の組合せも、その範囲内のすべて控訴人の予定した組合せに限定して思想、感情の同一性を保持している。本件ゲームの著作者である控訴人は、本件ゲームのプレイヤーが能力値を自ら入力する方法として、控訴人登録プログラムのみを用意しており、他の方法は予定していない。
コンピューターゲームの著作者は、コンピューターゲームという著作物を創作するに当たり、自己の思想、感情をストーリー展開及び出力画面に表現するが、この表現のためには、プログラム及びデータの双方を設定する必要があるから、データを変更することは、コンピューターゲームの著作物の表現の改変行為に当たる。被控訴人プログラムによって能力値入力時にチェックルーティンプログラムを含む控訴人登録プログラムの使用をさせないという行為は、本件著作物の切除に当たる。したがって、フロッピーディスク上の「NBDATA」に右限度を超えた能力値を書き込むことは、控訴人の意に反する本件著作物の改変である。
(ウ) 本件ゲームの控訴人登録プログラムにチェックルーティンプログラムを設定したのには、次の配慮がある。
第一に、プレイヤーが君主となり内政、外交、軍事全般にわたって綿密に戦略を組み立てながら中国統一を目指すというたぐいのゲームにおけるゲームバランスへの配慮がある。被控訴人プログラムによりゲームバランスが改変される具体的場合として、前記(1)の②、③がある。
第二に、技術上の不具合が発生することへの配慮がある。ゲーム製作者は、可能な入力値を制限しておくことによって、その範囲内でのみデバッグ作業を行えば足りるが、可能な入力値を無制限にしておくと、デバッグ作業には莫大な時間と労力が必要となる。これでは製品コストに合わないし、完全にバグを取ることができない。被控訴人プログラムにより技術上の不具合が生じる具体的場合として、前記(1)の①、④がある。
(エ) また、被控訴人プログラムを使用して一〇〇を超える能力値を入力することによって、本件ゲームのプログラムが停止し、暴走する場合がある。プログラムの本質的要素は、実行時に正常に動作することであるから、被控訴人プログラムは、本件ゲームのプログラムを破壊し、同一性保持権を侵害していることは明らかである。
被控訴人プログラムは、右のような結果を得ることのみを目的としたプログラムであり、これをコンピューター上で実行することも改変行為である。
(オ) そして、被控訴人が、ユーザーがこれを利用することによって右(1)のように本件著作物を改変する結果を得ることのみを目的とする被控訴人プログラムを記憶させたフロッピーディスクを製造頒布する行為も、改変行為に該当する。
(二) 被控訴人の主張
(1) 「NBDATA」はプログラム著作物ではない。また、被控訴人プログラムは、本件著作物に既に設定されている能力値を書き換えるものではなく、新たな能力値を書き込むことができるプログラムにすぎず、本件著作物に変更、切除その他の改変を加えるものではない。
本件著作物においては、シミュレーションゲームプログラムとしての性質上、既成君主、既成武将、新君主及び新武将ともに、登場人物の能力値はゲーム中に様々に変動し、また、新君主、新武将については一から一〇〇の範囲内においてもユーザーが能力値を自由に設定できる。そもそも、本件ゲームは、チェックルーティンプログラム付きの控訴人登録プログラムを用いる以外には新君主、新武将を作成、登録することができないとまでの構造にはなっておらず、種々のツールにより本件著作物中の「NBDATA」に一〇〇を超える能力値を書き込むことが可能である。これらの能力値の組合せは無限に等しいから、チェックルーティンプログラムを内蔵させることによって、思想、感情の同一性を保持することはできない。
(2) 被控訴人プログラムは、本件著作物の改変を目的としたものではない。被控訴人プログラムは、控訴人登録プログラムの、
① 新君主、新武将の能力値が乱数で決まってしまい、ユーザーの意思が十分反映されないこと、
② 設定できる能力値に限界があること、
③ 漢字入力が不便であること、
などの欠点を補うことを目的とするものである。一〇〇以下であれ、一〇〇を超えるものであれ、いかなる能力値を入力するかは全くユーザーの意思にゆだねられている。
(3) 控訴人は、被控訴人プログラムによって技術上の不具合が生じる場合のあることを主張するが、被控訴人プログラムによっても、本件著作物を停止させるとか、破壊するとの事実はない。
(4) 被控訴人プログラムを記憶させたフロッピーディスクの製造頒布行為は、本件著作物の改変行為とはいえない。
2 争点1に関する当裁判所の判断
(一) まず証拠と前記争いのない事実によれば、以下の事実関係を認めることができる。
(1) 本件著作物には、プログラムとして、メインプログラム、データ登録用プログラム(控訴人登録プログラム)及びチェックルーティンプログラムが含まれ、データとして、控訴人が既に作成済みのデータファイル及びユーザーが作成するデータファイルが含まれているところ、ユーザーが作成する新君主、新武将及びそれらの能力値のデータは、「NBDATA」というファイルに書き込まれる仕組みになっている(乙一三)。
出荷時の「NBDATA」は、何の能力値も設定されていないことを示すデータが書き込まれているファイルとして提供されており(甲八、乙一)、そこに設定される能力値の最大値は一〇〇であることが、本件著作物のスタートアップマニュアルに記載されている(甲六、弁論の全趣旨)。
(2) 本件著作物で、ユーザーによって設定される新君主、新武将の能力値及びあらかじめ記憶、蓄積されている既成の君主等の能力値のデータが、本件著作物中のメインプログラムに読み込まれ、これがプログラムの分岐要素となってゲームの次の処理が行われる(甲六、乙二)。
(3) 本件著作物において、新君主、新武将の能力値を一から一〇〇までと制限しているのは、新君主、新武将の能力値の入力範囲を一から一〇〇までに制限するための記述がある控訴人登録プログラム内蔵のチェックルーティンプログラムにおいてである(争いがない。)。
(4) 被控訴人プログラムは、控訴人登録プログラムに代わる別個のプログラムで、ユーザーに提供されるデータ登録用プログラムである(争いがない。)。
(二) 以上の事実関係を前提にして検討するに、「NBDATA」のデータは、本件著作物におけるプログラム全体の流れによれば、控訴人登録プログラムによって入力され作成されるものであり、ユーザーが「NBDATA」上に作成した新君主、新武将のデータを用いてゲームをしようとする場合には、本件著作物におけるプログラムは、本件著作物中の既存のデータとともに「NBDATA」上のデータを解析してゲームを進行させることになる。「NBDATA」上のデータは、本件著作物におけるプログラムが規定している一定の書式に従って記載されるものと認められるが、この書式上のデータが本件著作物におけるメインプログラムによって読み込まれ、同プログラムは次に移行すべき動作を解析するものということができる。
したがって、「NBDATA」にデータが入力され記載されたときには、「NBDATA」の書式は、その中の数値(パラメーター)を本件著作物におけるメインプログラムに渡す役割を果たし、右プログラムの一部となって動作するものと認めるべきものである。そして、右書式中に記載された数値も右プログラムに取り込まれ、これに包含されて動作内容を規定するものとなるのであって、「NBDATA」に控訴人登録プログラムの使用以外の方法によりこの数値を入力すること、さらには、この入力手段を提供することが、本件著作物におけるプログラムの改変に当たるものと評価すべき場合のあることも、直ちに否定することはできない。
(三) そこで、本件において、被控訴人プログラムに基づいて「NBDATA」にデータを入力し、メインプログラムを作動させることが、本件著作物におけるプログラムの改変に該当することになるか否かを検討する。
(1) まず、新君主、新武将の能力値の入力を一〇〇までに限定する控訴人登録プログラムを使用しないで「NBDATA」に能力値を入力する作業についてみれば、「NBDATA」自体はプログラムの著作物に当たるものではないので、本件著作物の同一性保持権の侵害に当たるものではないことは明らかである。
(2) 次に、一〇〇を超える能力値が入力された「NBDATA」を使用してメインプログラムを作動させることが、本件著作物の同一性保持権の侵害に当たるか否かについては、本件著作物がシミュレーションゲームに関するものであり、本来、その表現態様が種々に変化することが予定されているものであって、メインプログラムの動作の枠内でという客観的制約があるにしても、ユーザーが自由に作動させることによりゲーム展開が千変万化するものであることから、本件著作物の表現がいかなる範囲まで包含するものであるのかが明らかにされないままに、一〇〇を超える能力値が使用されることのみをもって、直ちに同一性保持権の侵害に当たるものと認めることはできない。
(3) そこで、本件著作物が表現する範囲についての検討が必要となるが、この関係で、控訴人は、「NBDATA」のデータ入力範囲を限定した配慮の一つにゲームバランスがあると主張し、この主張の当否によっては、本件著作物の表現の範囲も明らかになる可能性があり得る。しかしながら、本件ゲームはそのプログラムに従って種々様々に展開するものであるところ、控訴人が主張するゲームバランスの具体的内容、すなわち、控訴人が主張するゲームバランスを構成する本件著作物の具体的表現内容は、その主張によっても必ずしも明確ではなく、被控訴人プログラムによって「NBDATA」ファイルにおける能力値が、控訴人登録プログラムによるものを超えて設定され、メインプログラムに渡された場合の本件ゲーム展開により、どのように具体的に改変されるに至るのかの事実関係は、本件全証拠によっても明らかではない。
控訴人は、本件著作物において、十分なゲームバランスに基づく魅力的なゲーム展開の実現を意図したものであって、「NBDATA」に一〇〇を超える能力値を入力して本件ゲームをプレイすると控訴人の予定した範囲外のゲーム展開になると主張するところ、そのような内心の意図があったとしても、本件ゲームはもともとユーザーの自由な選択に基づいて多様に展開することが特色となっているものであり、右主張のようなゲーム展開が具体的にどのような範囲のものを指すのかは、客観的に明らかになっているとはいえない。仮に、その範囲が、控訴人プログラムにより新君主、新武将の能力値一〇〇までを「NBDATA」に入力した場合に表現される範囲に限られる旨の主張であると解しても、後記のとおり、「NBDATA」に一〇〇を超える能力値が入力された場合でも、極端な能力値が入力されたときを除いては、メインプログラムがこれを受け容れて動作し、ユーザーの自由な選択に基づく作動に従ってゲームが様々に展開していくものであり、一〇〇を超える能力値を入力した場合のゲーム展開が、能力値一〇〇以内である場合のそれと明確な差異があるとは認め難い。したがって、控訴人の右主張をもってしても、本件著作物の具体的表現がどのように改変されるに至るかの事実関係が明らかになるものではない。
(4) 以下、右の結論に至った理由を、更に控訴人の主張との関係において説明する。
(ア) なるほど、証拠(甲二一、二五)及び弁論の全趣旨によれば、被控訴人プログラムにより一定限度を超えた能力値設定が行われた場合に、前記1(一)(1)の②、③のようなゲーム展開になることは認められる。しかしながら、この点も、次の理由により、被控訴人プログラムによって本件著作物が改変されるものと認めるべき根拠とならないというべきである。
すなわち、本件著作物におけるプログラムには、一定限度を超えるデータを入力しようとしても受け付けないというチェックルーティンプログラムが控訴人登録プログラムに内蔵されて組み込まれているが、控訴人登録プログラムを用いる以外の方法での新君主、新武将の作成、登録を不可能にするガード、あるいは、控訴人登録プログラム以外のプログラムで作成された「NBDATA」の数値を受け付けないというガードは組み込まれていない(弁論の全趣旨)。本件著作物におけるプログラムは、控訴人登録プログラムを使用しないで入力された「NBDATA」の数値も排斥せずに、すなわちガードを掛けないでそのままメインプログラムのパラメーターとして受け付けて処理する仕組みになっている。パーソナルコンピューター操作に慣れたユーザーは、当時一般に頒布されていた「エコロジー」(商品名)に代表されるようなMS―DOSのデバッグ汎用ツールを使用すれば、控訴人登録プログラムを使用せずに新君主、新武将の作成、登録を行い、その能力値を入力することができるものであり、本件ゲームに限らず、新たなゲームキャラクターの作成方法を解説する雑誌記事等も、本件著作物創作の平成四年より以前から一般に出回っていたことが認められる(甲八、二七、乙一〇ないし一二)。
したがって、「NBDATA」における新君主、新武将の能力値を入力するのに、本件ゲームを購入したユーザーが控訴人登録プログラムを用いるか否かは、本件著作物におけるプログラムを作動させる際においては、ユーザーの自由になし得る範囲のものであったというべきである。旧来の著作物とは異なり、著作権法上の著作物として新しく加えられたコンピュータープログラムに対し、具体的にいかなる範囲の同一性保持権を認めるかにつき一般的な共通認識が必ずしもない段階においては、著作者の意思表明もその範囲画定の際の有力な事情となると解されるが、本件著作物におけるプログラムの右のような仕様からみても、前述のように様々に展開するゲーム展開を処理するプログラムの改変禁止範囲の限界(同一性保持権で保護されるべき範囲)についての著作権者である控訴人の意向は、ユーザーに対して明確にかつ絶対的なものとしては伝わっていなかったというべきであり、このことは、右プログラムの表現内容の範囲が客観的に明らかでないことを裏付けるものである。
(イ) また、本件著作物のサブマニュアルに「(新君主、新武将の)各能力の最大値は100です。」と記載されていることが認められるが(甲六)、この記載自体で、本件著作物の具体的表現の範囲が明らかにされているとはいえない。すなわち、本件著作物に添付のサブマニュアル「三國志英雄譚」において、「勝利に至るまでの決まったルートは、シミュレーションにはありません。プレイするたびに新しい方法が発見されます。……決まった道筋はありません。先の見えない物語をあなた自身が創っていってください。」との記載があり(乙二〇)、本件著作物のパッケージの裏面にも、「新君主に加えオリジナルの武将が60人も作成でき、自分だけの物語を楽しむことも可能です。」と記載されていることが認められるところであって(甲一)、これらの記載も併せてみると、能力の最大値は100である旨の右サブマニュアルの記載が、ゲーム展開にいかなる意味を持つのかは、明らかでない。
(ウ) これらの事情に、ゲーム展開の内容の上においても前述のように本件著作物のゲーム展開についての具体的な表現内容が明らかでないことをも合わせてみると、本件著作物の改変の対象が特定されているものということはできないといわざるを得ない。
(エ) なお、前記1(一)(1)の①、④におけるように被控訴人プログラムによって二二八以上の能力値を入力した場合、本件ゲームが停止することがあることは、証拠(甲一〇、一三、二九)及び弁論の全趣旨により認めることができる。しかしながら、この点は、新君主、新武将の能力値の登録内容が本件ゲームのプログラムが正常に動作する範囲外のものであったことの一時的現象である。この一時的現象により、再作動後のパーソナルコンピューターの作動あるいは本件著作物の作動に影響を及ぼす場合には、本件プログラムを改変するものと評価することも可能であろうが、本件においては、右①、④によっても、本件著作物におけるプログラム自体が改変されるものではないし、さらには右のような影響が生じるものとも認めることはできない(ゲーム停止という事態が生じるに至ったのが、控訴人が提供しているものではない被控訴人プログラムを使用して能力値を入力したユーザーの行為によったものであることは、ユーザー自身で自覚し得るものであるから、ユーザーの責任においてゲームを再開すれば足りるものである。)。
したがって、この現象が生じることをもってしても、被控訴人プログラムによる能力値の設定が、本件著作物におけるプログラムによるゲーム展開の表現に関する本件著作物の改変に当たるものということはできない。
(四) 以上のとおりであるから、控訴人登録プログラムを使用せず被控訴人プログラムを使用して「NBDATA」に能力値を入力することを可能にさせることをもって、本件著作物の改変に当たるものする控訴人の主張は、その前提を欠くことになり、被控訴人プログラムが本件著作物を改変するものとは認めることができない。
七 争点2についての主張及びこれに対する当裁判所の判断
1 争点2、すなわち、本件ゲームは、映画の著作物(著作権法一〇条一項七号)又はゲームの著作物(著作権法二条一項一号)といえるかに関する当事者双方の主張は次のとおりである。
(一) 控訴人の主張
本件ゲームは、映画の著作物というべき次の各要件を充足している。また、仮に本件ゲームが映画の著作物に該当しないとしても、その視覚的表現からすれば、映画の著作物に類するパーソナルコンピューター用シミュレーションゲームという著作物である。
(1) 著作物性(内容の要件)
本件著作物は、中国の古書「三國志演義」の登場人物、歴史、地形、状況を基に、プレイヤー(ユーザー)が君主となり、内政、外交、軍事全般にわたる戦略を立てて中国統一を目指すもので、パーソナルコンピューター用シミュレーションゲームとして、著作者の思想、感情を創作的に表現したものであり、広くは文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属する。そして、以下の要件も満たすことにより、本件著作物は、著作権法上の映画の著作物に該当する。
(2) 映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法での表現(表現方法の要件)
本件著作物を構成するプログラム及びデータにより、パーソナルコンピューターのディスプレイ上に本件著作物を影像として映し出し、パーソナルコンピューターにサウンド装置が付属している場合には、ディスプレイ上の影像に伴った効果音やバックグラウンドミュージックを発生させる。オープニング画面には動画が映し出され、影像が連続する。
ユーザーが条件を入力設定し終えれば、本件著作物が稼動し、アニメーション映画のように連続した影像がディスプレイ上に表現される。
(3) 固定化(存在形式の要件)
本件著作物のディスプレイ上の影像は、フロッピーディスクに記憶され、固定化されている。
(二) 被控訴人の主張
ゲームソフトにおいて、表現方法の要件(映画類似性)が認められるためには、映画の視覚的効果にも比すべき影像の流れが実現されていることが必要である。
アクションゲームとは異なり、知的操作の比重が大きくて、敏捷な対応が当然には要求されない結果、影像が動きを持って見えることが本質的要請といえないクイズゲームやシミュレーションゲームは、映画の著作物とはいえない。また、本件著作物の画面には、全体として映画の著作物といえる影像表現はない。
2 争点2に関する当裁判所の判断
(一) まず、本件著作物は、いわゆるシミュレーションソフトの分野に属するゲームソフトであり、ユーザーの思考の積重ねに主眼があるものということができ、そのプログラムによって表されるディスプレイ上の影像の流れを楽しむことに主眼をもっているものでないということができる。そして、本件著作物におけるプログラムはフロッピーディスクに記憶されてユーザーに供給されており(被控訴人プログラムが対応するNECのPC9800シリーズ又はエプソンのPC286/386シリーズのパーソナルコンピューター用の本件著作物は、三枚の2HDフロッピーディスクに収められて出荷されている。甲一、乙一)、その中には影像及び効果音に関するプログラムのみならず、シミュレーションに関するプログラムも含まれていることからすれば、ディスプレイに現れる影像及び効果音に関するデータ容量は極めて限られたものとなっていることが明らかである。影像も連続的なリアルな動きを持っているものではなく、静止画像が圧倒的に多い。本件ゲームで動画画像が用いられているのは、軍事戦争場面など一部にとどまり、軍事戦争における戦闘シーン、一騎討ちシーンなどの個々の影像も、右のようにフロッピーディスクに収容できる程度のデータ内容及びプログラムで動作させるため、定型データを利用するものとなっていて、同じ内容の定型的な画像及び効果音がたびたび現れるものにとどまっている(以上、乙二六及び弁論の全趣旨)。そして、本件ゲームにおいては、ユーザーがシミュレーションにより思考を練っている間は、静止画の画面構成の前で思考に専念できるよう配慮されているものというべきである。
以上の事実関係からみれば、本件ゲームは、映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現されているものとは認められず、本件著作物が、映画ないしこれに類する著作物に該当するということはできない。
なお、本件ゲームの起動画面で文字の連続影像が現れ、効果音が聴取されるが、これは、個々の影像とは独立のものであり、起動画面だけのものであるから、これらから、本件著作物について映画としての著作物性を認めることはできない。
(二) 控訴人は、本件著作物の視聴覚的表現は、著作権法二条一項一号所定のゲームの著作物であると主張するが、著作権法にゲームの著作物そのものを定義づける規定はないので、本件著作物につき、ゲームの著作物であるとして著作権侵害行為の有無を判断することはできない。控訴人が主張するところは、要するに、映画の著作物に類似する著作権法上保護すべき著作物であるというものと理解されるが、右(一)に判示したところによれば、本件著作物をもって、映画の著作物に類似する著作物に該当するものとは認められないというべきである。
八 結論
以上のとおりであり、その余の争点について判断するまでもなく、著作者人格権(同一性保持権)に基づく控訴人の差止請求(原審からの請求)及び当審で追加された慰謝料請求は、控訴人主張の改変の事実が認められないので理由がない。また、当審で追加された著作財産権(翻案権)に基づく損害賠償請求も、控訴人が主張する著作物性が認められないので理由がない。
なお、当審で追加された各請求は、原審から請求されているのと同じく本件著作物に関する著作権法上の請求であり、請求の基礎を同一にするものである。審理も、法律解釈に関する当事者双方の主張を追加し、書証を追加するなどのものにとどまり、右追加による訴えの変更により訴訟手続を著しく遅滞させるものでもないから、訴え却下を求める被控訴人の申立ては理由がない。被控訴人は、準備手続終結による失権効の主張もしているが、同様の理由により採用することができない。
よって、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官永井紀昭 裁判官塩月秀平 裁判官市川正巳)
別紙物件目録
「ORGEP」と称するプログラムが電磁的に記憶されたフロッピーディスク、カードその他コンピューター用記憶媒体